2023年4月23日日曜日

新UCI規定から空力を学ぶ

パイプを組んだ昔ながらのフレー厶は、空力なんて考えても仕方ないと思われがちです。しかし実際のところは、人間と統合したトータルの空力を考慮する必要があります。
私は自動車整備士ですから、空力に関してはある程度知っているのでそのあたりも交えてお話します。

新UCI規定に対応した新型のフレームでは、ステムに空洞を作っているものがみられます。これは意図的にステム真後ろへ空気を送り込むことを狙っており、そこに空力の重要なヒントがあります。
残念ながらレイダックは昔ながらのステムであり、ステム後方・トップチューブ真上に負圧ができてしまいます。逆に言えば、一般的な自転車はステム後方が元々負圧であるため、トップチューブバッグなどが空気抵抗になりにくくなります。前方投影面積が増えない範囲でトップチューブバッグを取り付けすれば、ステム後方の負圧を抑制することができます。
逆に、ステムに空洞を設けた新UCI車両の場合はサドルバッグが抵抗になりかねないので注意が必要です。




下ハンドルの真後ろに脚があれば、下ハンドルを握ったとき脚に当たる風を軽減できます。集団の中にいるときはブラケットを持つほうが絶対的な空気抵抗を減らせるのですが、単独であったり先頭の場合は脚の疲労を防ぐために下ハンドルが非常に重要になります。また、ダウンヒルでも脚が冷えるのをいくらか防げます。
この効果を発揮するために、下ハンドルは十分に低くなければなりません。セミドロップハンドルやブルホーンハンドルなどでは効果が十分に発揮できないため、単独では速度を多少落とす必要があります。
ただし、身長が高くハンドルに十分な落差があれば別です。この場合にはブラケットを握るなどしてもある脚の風除けができるため、大きな問題にはなりません。
古い27インチのランドナーなどが落差大きめの丸ハンドルを使うのは、空力的に見ればタイヤが大きくて落差が作れないのをハンドル形状で補って披露軽減しているともいえます。
さすがにその時代にそこまで考慮されていないはずですが、経験則から最適なハンドル形状をとった結果がそうなったのでしょう。
裏技としては、フロントバッグを取り付けるという方法があります。前に荷物があれば大抵の場合風を受けてくれるので、空力性能は悪化しますが脚に風が当たらなくなります。

 
サドル周りは空力の要です。
ハンドル後方の空気の流れが最終的にどうなるか決定づけるからです。空力においては、空気が当たる全面よりも抜けていく後方の形状が重要なのです。
ちなみに私のレイダックは、空力的に不利です。ただ、私は身長がそもそも低くシート位置が低いためあまり問題にはならないでしょう。レイダックでいえばデュラエースのピラーが涙滴形になっています。
皆様は空力というと涙滴形をイメージしませんか?実際はカムテール形を採用することが現在の主流です。涙滴形は後方に十分な長さを作れれば最適形状なのですが、実際は横風やスペースの問題もあり難しいものです。そこで、涙滴の後方を切り落としたような形状をとることで、高い空力性能を維持しつつ横風に対応できるようにしています。

サドルバッグを取り付けする場合には、サドルベース真下には空洞ができるようにしたほうが良いです。サドル後方の負圧を抑制することができます。サドルベースの表面にゴルフボールのような凹凸があればなおよしですが、このサドルはかなりのっぺりしているので空力的に多少不利です。

上体の後ろに負圧が発生しますが、サドルベース下の隙間から図のように空気を送り込み、負圧を抑制します。
他にも、大型サドルバッグを用いる方法があります。骨盤屈曲部分から空気が後方に流れますが、その後ろに発生する渦を大型サドルバッグが抑制します。中型・小型サドルバッグにはない空力特性です。



ちなみに丸いパイプというのは空力的に非常に不利です。そのためレイダックもかなり空力が弱い部類に入ります。空力が悪いバイクでは、今のバイクより単独巡航速度が最大2km/h程度落ち込みます。特にボトル類などサイズの大きい円筒状の物体は、空力を大幅に悪化させます。



空力は人間のウェイトが大きいため、ポジションを最適化した上で各部調整するのがポイントです。
ヘルメットなしが空気抵抗において最適であるくらい、形状より前面投影面積が重要です。ヘルメットなしという訳にはいきませんが、それくらいには投影面積を減らすことを重視しなければなりません。全体を完全な涙滴形にすれば「円筒の10%」にまで抵抗を減らせますが、現実的に考えてリカンベントにしてシェルを作るしかないので、あまり執着しすぎないほうがよいです。
また、形状で空力を改善するにしても、物体の中間部分より端部に細工をしたほうが効果的です。いずれにしても、後ろへどう空気を流すかが重要です。

追記:ヘルメットありで空気抵抗が増える要因は、ヘルメット後方に発生する負圧です。
ヘルメットを装着した上で空気抵抗を減らすには、肩甲骨を寄せて首の位置を下げた上で前を向く必要があります。

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