車種 ワゴンR
型式 DBA-MH22S
症状 エアコンつけて10分程度で効かなくなる
今回はエアコン診断なので、電気系の異常と機械的な異常の両方を考慮して診断していきます。
①現象の確認(再現性はあるか?発生条件は何か?五感で分かることは?etc.)
②不具合原因の推定(①から可能な限り絞り込む。)
③電圧測定(必ず電源から順に。いきなり部品本体に飛びつかない。)
④不具合箇所の特定(③から原因を絞り込んで点検。)
まずは、症状の再現(①)を試みます。エアコン内部の状況も同時に確認しておきたいので、ガス圧を計測しながら行っていきます。
ガス圧の計測には、ゲージマニホールドという道具を用います。測定値はだいたい2000rpmでその時の値をとり、正常値かどうかを確認します。
ただし、ゲージマニホールド取付時はエンジンを切って行いましょう。特に軽自動車などでは、取り付け位置が奥まっている場合があり巻き込み事故などの危険性があります。
夏場であれば、エアコンONにしてからしばらく経つと、(停止状態では特に)ガス圧が2.3MPaくらいまで上昇します。それ自体は異常ではないので誤判断しないように気をつける必要があります。
10分程度で症状は再現できました。突然ぬるい風になってしまい、ガス圧ががくんと落ちています。この時点でエアコンの冷媒回路は全く機能していないと考えられます。つまり、コンプレッサーが動いていないはずです。
エンジンルームを確認してみると、やはりコンプレッサーのマグネットクラッチが作動していませんでした。
ここで注意すべき点は、マグネットクラッチが作動していない原因(②)は複数考えられるという点です。
・圧力センサの異常検知
・エバポレータセンサの異常検知
・センサ類の故障
・ヒューズが飛んだ
・リレーが故障した
・コンプレッサ本体の故障
これだけ見ると非常に面倒な診断に思えるかも知れませんが、簡単に絞り込む方法もあります。
まずは、ヒューズやリレーの可能性はないだろうとすぐに判断できます。理由は単純で、10分経つまでは正常に作動しているからです。
同じ理屈でコンプレッサーもないと判断…したいところですが、ここはぐっと堪えましょう。先に説明したように、エアコンをかけて時間がたつと圧力が多少上がってきます。つまり、そこで熱を持っているということです。熱が時間経過で悪さをしている可能性もあります。
単純な電子部品と、機械的な作動を担う部品を同じように考えてはいけないということです。
電圧測定といきたいところですが、しらみつぶしにコネクタを抜いたりセンサーを調べたりする前に、まずは診断機を繋いでみるのもよいでしょう。
すると、コンピュータ側では「エアコン動け」と要求していることがわかりました。つまり、10分経ってもコンピュータ自身は正常に仕事をしている訳です。センサー類も正常だろうという判断がここでつきますね。
残された選択肢は、症状が出たときにマグネットクラッチ回路内に異常が発生しているということです。
これまでに述べたことを考慮すると、以上はおそらくコンプレッサ本体にあると思われます。電圧測定の結果、やはりコネクタまでは電源が供給されているため、本体内部での不良かアースです。しかし、コンプレッサは大きな面積でボデーに直接アースを取っているため、余程のことがなければアース不良は起きません。本体不良と考えるのが妥当でしょう。
本体点検を行った結果、マグネットクラッチのクリアランスが過大であることがわかりました。熱膨張でクリアランスが大きくなったときに、マグネットクラッチの磁力が届かなくなったということでしょう。
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