2022年9月7日水曜日

事例001 セル回るがエンジン掛からない ダイハツ・ムーヴ

車種 ダイハツ

型式 DBA-L175S

症状 初爆なし(セル回る)


エンジンの基本は、良い混合気・圧縮・火花ですから、その点を念頭に置きます。

診断の基本は、以下のような手順です。


①現象の確認(再現性はあるか?発生条件は何か?五感で分かることは?etc.)

②不具合原因の推定(①から可能な限り絞り込む。)

③電圧測定(必ず電源から順に。いきなり部品本体に飛びつかない。)

④不具合箇所の特定(③から原因を絞り込んで点検。)


高年式車のECUならかなり細かな不具合箇所までDTCを拾うようになっていますが、この車種では残念ながらそうはいきませんので、①は特に重要になります。

クランキングはできているので、まずは燃料系の確認。燃料が送られているかどうかは、フューエルポンプの音を聞けば確認できます。(車種によってはIG-ONではフューエルポンプ動かないため注意。)

フューエルポンプ音がないことを確認。この時点で、フューエルポンプ回路が成立していないかフューエルポンプ本体が故障しているかのどちらかであると推定できます。

では、電源から順に追っていきます。電圧測定時の注意点は、測定したい条件が整っているか確認することです。たとえば、電源系統ならIG-ONである必要がありますし、リレー測定時はリレーが作動する条件が整っている必要があります。


フューエルポンプを動かすプロセスは、どこのメーカーでもおおよそ同じです。

(フューエルポンプの制御やエンジンスタートの方法によって異なります。)

まずはメーンリレーがIG-ONに従って、何らかの手段でメーンリレーをONにします。これによってECUが起きます。もしECUが寝ていればクランキングもできないはずなので、ここは深く考えずスルーしてよいでしょう。

次に、ECUがフューエルポンプリレーを作動させることで、フューエルポンプに電源が供給されます。これによって、フューエルポンプは作動するはずです。

まずはフューエルポンプのヒューズを確認してみます。ヒューズが溶断していましたので、フューエルポンプリレーが作動していなかったことがわかります。

ヒューズが切れているということは、過電流が流れたということです。つまり、バッテリ電圧のかかっている配線または部品がアースにショートしているということが推測できます。尚、場合によってはバッテリが弱っていると正しく再現できないことがあるため、バッテリチャージャーなどで充電しながら検証することをお勧めします。

ヒューズが切れた場合のショート点検は、以下のいずれかの方法で確認できます。

①ヒューズを交換し、電源~部品までのコネクタをすべて外す

②ヒューズを取り外して電球を取り付け、電源~部品までのコネクタをすべて外す

まずは①の手順を説明します。①の場合、ショート箇所を一旦切り離すことになるため、一時的にショートは起こらなくなります。その状態でコネクタを順に接続し、再びショートが起こった場所~部品までのどこかでアースへのショートが起きていることがわかります。この際、コネクタを接続する時には必ずIG-OFFで接続していきましょう。特に近年の車両では多数のコンピュータが情報交換(CAN通信)しているため、ECUが寝る・起きるのタイミングをほかのコンピューターと合わせられず別のDTCを拾うこともあります。症状がなるべく複雑化しないように正しい手順を踏む必要があります。

次に②の手順を説明します。②は、ヒューズの代わりに大量に並列接続した電球を取り付けるという方法です。ショート箇所のコネクタを接続した際に電球が点灯するため、①の方法でいうところの「ヒューズが切れた」=「電球が点灯した」ということになります。電球の代わりにサーキットテスタの電流レンジ最大で一瞬だけ繋ぐという裏技もありますが、自己責任でお願いします。


今回は②の方法で検証したところ、イグニッションコイルNo2を接続したところで電球が点灯しました。つまり、イグニッションコイルNo2本体またはスパークプラグでショートが発生しているということです。

外してみたところ、イグニッションコイルに亀裂が発生していました。ここからリークしていたと考えて間違いないでしょう。対策部品がありますので、コイルとヒューズを交換して作業完了です。軽自動車の場合はイグニッションコイルが早期にめげるので、予防整備で3気筒同時交換も良いかと思います。

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