UberEats・出前館・menu・PickGoなど、いわゆる「配達員」が世間に普及し、お馴染みのファミレスや中華料理・イタリアン・丼などが気軽に頼めるようになりました。
今回からは「自転車で出前配達をする方法」について解説していきます。第一回となる今回は、事前に必要な設備と書類について解説していきます。
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出前配達ってアルバイト?
確かにピザデリバリーなどのアルバイトは存在しますが、出前配達はアルバイトではありません。かといって正社員や契約社員の類にも当てはまりません。つまり、ウーバーイーツを筆頭とする出前配達は誰かに雇われるわけではありません。
具体的に言うと、「業務委託契約を結んで、一個人として出前の仕事を引き受ける」という形になります。副業やアルバイトの代わりとして受けることもでき、年間20万円以下であれば、税務署に確定申告は不要です。ただし勤務先には、Wワークや副業が禁止されていないか確認しましょう。
住民税の申告は必須
所得を得ることによる税金は、大まかに分けて2種類あります。ひとつは税務署に納める所得税で、もうひとつは役所に納める住民税です。前者は事業所得が103万円(副業の場合は22万円)を超えなければ申告が不要です。ただし、後者は所得が少なくても必ず申告しなければなりません。すなわち、業務委託の出前配達による収入発生時は必ず申告(確定申告または年末調整)しなければならないということです。なお、所得が”20万円超なら確定申告で対応””所得が20万円以下でWワークや副業なら年末調整で対応”という扱いになります。
ただし、専業の場合は20万円以下でも黒字決算なら確定申告が必要です。
確定申告は赤字でもするべき
出前配達で赤字になることは考えにくいですが、家事と兼業するなどして収入が少ない場合にも確定申告はしなければなりません。また、赤字の場合は確定申告が不要ですが、いずれにしても確定申告はすべきです。その理由は以下のとおりです。
- 源泉徴収分の還付を受けられる(会社勤めの場合なら、払い過ぎの所得税を返してもらえる)
- 所得を証明できない(ローン審査で不利になる)
- 健康保険料の軽減措置を受けられる
要するに、自分の事業の結果を証明できるということです。結果として、税金等の払いすぎを防ぐことができます。ただし、他の事業などの関係で融資を受けなければならない場合、不利になるので赤字決算にならないよう気をつけましょう。
専業で出前配達をする欠点
Wワークや副業など他に安定した収入がある場合はよいですが、専業として出前配達を行うにはいくつか欠点があります。主には以下の通りです。
- 収入が安定しない(怪我などをすると収入がゼロになってしまう)
- 税金等が高くなる(特に、社会保険(国民保険と国民年金)が全額自己負担になるので負担大)
- 手続きが面倒(確定申告や各種納税など、諸々の知識が必要)
個人事業主・いわゆる自営業者として専業で出前配達をする場合には、このような特性をよく理解しておく必要があります。特に最初はうまく稼げず、生活費でじわじわ貯金が減って精神的なダメージを受けがちです。事業を始めるにあたって、貯金は十分にあったほうが良いです。また、失敗したら身を引こうという損切りの気持ちを持っておきましょう。
さて、先ほどの箇条書きのうち税金については、家族の扶養内に入れば軽減することができます。ただし、収入によっては扶養や税制などによる”恩恵”を受けられなくなるので注意が必要です。通称「壁」といい、次のような壁があります。
- 100万円の壁・・・事業所得など総所得※が45万円以下の場合は住民税が非課税となる
- 103万円の壁・・・事業所得など総所得※が48万円以下の場合は所得税が非課税となる
- 130万円の壁・・・年間収入が130万円以上になると、社会保険の扶養※2から外れる
- 150万円の壁・・・事業所得など総所得※が95万円超で配偶者特別控除の金額が減る
- 201万円の壁・・・事業所得など総所得※が133万円超で配偶者特別控除が0円になる
※一般に「壁」とは給与所得に関する説明のため、ここでは事業所得に説明を置き換えている。
※2社会保険のうち国民保険は「公的医療保険」のひとつです。公的医療保険は「国民皆保険制度」により、国民全員が加入しなければなりません。また、社会保険は踏み倒し続けていると財産差し押さえになります。
なお、扶養に入る場合は「被扶養者(異動)届」などの書類を所轄の年金事務所(または事務センター)に提出します。
「控除」が壁を決定づける鍵
先ほど、「年間収入」「事業所得」「給与所得」「総所得」という言葉が出てきました。まずは、これらの違いについて説明していきます。
①年間収入
(会社に属している場合)給与明細を見ると、税金や保険料などが給与から差し引かれています。収入とはこれらを差し引く前の金額です。個人事業主における年収の定義は非常に簡単で、業務委託配達員なら報酬金額の合計です。
②事業所得
個人事業などの事業によって得た所得です。事業所得は「売上ー売上原価ー経費」ですが、個人事業で業務委託配達員なら「売上ー経費」で差し支えありません。ちなみに、業務委託配達員をすぐにやめてしまって継続性がない場合は「雑所得」扱いになります。
③給与所得
会社からの給料によって得た所得です。給与所得は「源泉徴収票」と呼ばれる書類で確認できます。源泉徴収票では、年収・所得・納税額を確認することができます。
④総所得
総所得は、Wワークや副業などすべての所得の合計です。
※所得の区分には他にも種類があります。不動産所得など他区分の所得がある場合は、決算書を分けて作成する必要があるので、確定申告時に注意しなければなりません。
先述のとおり、所得が大きいほど様々な恩恵が受けにくくなります。様々な恩恵とは、「壁」のみならず国民保険金額や所得税・住民税額も含みます。ここで「手元に残るお金ははなるべく大きくしたい」のに「所得はなるべく小さくしたい」という矛盾が発生します。
ここでポイントになってくるのが「所得控除」です。最終的な”様々な恩恵”の判定は、この所得控除分を差し引いた金額をもとに行います。すなわち、所得控除が大きければ”恩恵”を多く受け、手元に残るお金が増えるということです。
控除には様々な種類があるため確定申告前によく調べておく必要がありますが、ここでは特に重要で事前準備も必要な青色申告特別控除について解説します。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。前者は手続きが簡単なため、「試しにウーバーイーツをやってみた」くらいの場合にこちらの申請を使うと便利です。後者は手続きが非常に煩雑ですが、次のようなメリットがあります。
- 30万円未満の減価償却資産※や家族への給与を経費計上できる
- 青色申告特別控除(最大65万円)を受けられる。
経費計上と最大65万円の控除を併用すれば、配達による報酬を減らさずとも”様々な恩恵”を受けることが可能になります。事業を継続したいのであれば、ぜひとも青色申告を行いたいものです。
では、この控除を受けるための条件を以下に示します。
65万円の控除を受ける条件
①「正規の簿記の原則」に基づく複式簿記の記帳
②賃貸対照表と損益計算書の添付
③期限内(2月16日から3月15日)に確定申告
④e-Taxによる申請または優良な電子帳簿保存と一定の提出
55万円の控除を受ける条件
①「正規の簿記の原則」に基づく複式簿記の記帳
②賃貸対照表と損益計算書の添付
③期限内(2月16日から3月15日)に確定申告
10万円の控除を受ける条件
①簡易な記帳を行う
この通りです。次の項目では、これらを順を追って解説します。
青色申告のための基礎知識
簿記とは、家庭でいうところの家計簿です。事業においては「複式簿記」という記帳方法を用います。
まずは、複式簿記の作成において重要な「正規の簿記の原則」について説明します。この原則が必要な理由は2つあります。ひとつは、添付が必要な「賃貸対照表」と「損益計算表」を正しく作成するためです。もうひとつは、「真実性の原則」(不正がない報告を行うということ)を満たすためです。知らずのうちに不正をしてしまわないためにも、次の要件を知っておく必要があります。
①網羅性・・・事業における経済活動は「一切の漏れなく」記録しなければなりません。
②立証性・・・複式簿記に記帳されたすべての記録は証拠資料が必要です。
③秩序性・・・その時々で都合よく経費にしたりしなかったり…などの行為はご法度です。
①③については、ルールを守って記録することで実行できますが、②については注意が必要です。
一般的な簿記ソフトでは「総勘定元帳」という書類が自動作成されます。総勘定元帳とは、勘定科目(=各取引の分類)ごとに並べて集計する書類ですが、これは7年間保存しなければならない書類です。総勘定元帳の立証性を保つためには、預金通帳や金庫の現金の状況が、総勘定元帳と一致していなければなりません。つまり、通帳明細の中に家計や私的な買い物が混ざっていると、そのすべてを記録しなければならず大変な作業になります。そういった点を踏まえても、事業用の口座は別で用意しておくべきです。
次に、「優良な電子帳簿」とは何かを解説します。優良な電子帳簿の条件は、以下の通りです。
- 訂正・削除履歴が残る
- 帳簿間で相互関連性要がある
- 検索機能がある
- モニター・説明書などを備え付けている
優良な電子帳簿の条件を満たすものは、高額であるものや毎月の支払いが発生するものがほとんどです。しかし、電子帳簿としては最適であるともいえます。確定申告時に他の必要書類とともに提出すれば、65万円の控除を受けることができます。
優良な電子帳簿がなくとも、65万円の控除を受ける他の方法があります。それがe-Taxによる確定申告の提出です。
e-Taxとは、税務署に提出しなければならない調書・届出・申告などをインターネットで行えるソフトおよびwebサイトです。これを使いこなすことができれば、控除だけでなく税務署に出向く手間と交通費を省くことができます。
e-Taxを使う主な場面は確定申告ですが、その他に開業届等の提出があります。青色申告を行うためには、青色申告承認申請書と併せて開業届と事業開始等申告書(後者は都道府県税事務所によって提出期限などが異なる。)の提出が必要です。これらの開業手続きはe-Taxにより提出できます。
e-Taxを使う場合、簿記ソフトは各書類の自動作成ができれば良いため安価で済みます。青色申告に対応しているソフトとして、「aoiro プレミアムエディション」がおすすめです。公式サイトではアプリの使い方や記入例などが紹介されています。業務委託配達員における記帳はそこまで複雑なものにはなりませんので、こちらのソフトで十分に対応できます。
なお、e-Taxを使いこなすには「マイナンバーカード」と「マイナンバーカードに対応したカードリーダー」が必要です。あれば各手続が非常にスムーズになりますのでおすすめです。もちろんパソコンも必要ですよ・・・!
さて、次回は実際に開業に向けて必要な作業を解説していきます。また、業務委託配達として必要になるであろう複式簿記の記入例を紹介します。
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